40歳の寄り道

某月某日。

知らない番号からの着信

犬好きな私でも、犬の散歩に行きたくなくて仕方ない時がある。散歩から帰宅後の掃除や料理がしんどかったり、犬を見る人の視線が、なんだかものすごく気になって気になって仕方なかったり、気がつくと歩きながらネガティブな思考に陥っていたり、1日2回の散歩がしんどくてしんどくて仕方ない。そんな時が1週間に1回くらいある。「犬を飼いたい」と言いながら、いつも通り学校や会社に行き、いつも通りに過ごしている夫や子どもにも腹が立つ。夫のテレワークの日くらいは、朝だけでも犬の散歩をしてもらおうと思ったら、「しばらくテレワークは、できないよ」と夫。私は、笑顔で「そう、昼ごはんを作る手間が省けて良かったわ」と言いながらも、心の中がザワザワしていた。

救心を飲み、今日も私は犬を散歩に連れていく。犬の散歩だって家事だって、こんなに頑張っているのだから、何か大きなご褒美があっても良いと思う。きっと良いことがあるはずだ。挫けず真面目に頑張ろう。

朝、犬の散歩から帰ってくると、090から始まる知らない番号から着信があった。着信時刻は8時40分。こんな朝早くから誰だろう。もしかしたら、学校の先生の携帯電話かもしれない。学校で息子に何かあったのかもしれない。留守番電話にメッセージが残されていたので、慌てて再生してみる。スマートフォンを持つ手に汗が滲む。

「もしもし。今日はホームセンターに寄ってから伺うのでちょっと遅れます」

中高年くらいの男性の声。

…いや、誰だよ。

今日は誰とも会う約束とかしてないし、明らかに間違い電話である。力が急に抜けて「なんだったんだ」と、ソファにどんと凭れると、犬がやってきて「どうしたの?」という顔をしながら膝の上に乗ってきた。いっぱいいっぱい撫でて、犬の背中に顔をうずめた。