41歳、黄桃記念日

某月某日。

ぼくのお気に入り

午前2時。犬のヒンヒン、ヒィーンという鳴き声で目が覚めた。緊急事態が起きた時の鳴き方だ。

リビングに行くと、暗闇の中、自分の手の届かないところに片付けられてしまったお気に入りのおもちゃを見ながら、短い後ろ足で立ち、短い前足をちょいちょい一生懸命動かしている。

「ダメだよ、こんな時間に遊ばないよ」

「ウゥゥー」

不満そうな犬。こんな夜中に吠えられてもうるさいので、おもちゃを取ってあげることにする。

「私は寝るから、一人で遊んでいてね」

とおもちゃを床に置くと、それで何をするわけでもなく安心したかのように寝床に帰っていった。

「そうそう、ぼくのお気に入りは、ぼくの手の届くところになきゃダメだよ」

と、犬の背中が語っていた。私もトイレに行き、再び眠りについた。

朝、起きると雨が降っていた。息子が中学生になってから、初めての雨だ。制服の上から着る雨ガッパに戸惑いつつも、なんとか自転車で登校していった。