40歳の寄り道

某月某日。

テレビが話し相手

寒い。カーディガンを羽織り、レッグウォーマーを履いた。それでもまだ寒くて体調を悪くしそうだったので、白湯を飲み暖房をつけた。息子は半袖の体操服姿で、元気に過ごしているというのに。エアロバイクを漕いで汗でもかけばよかったかな。そんな五月の始まり。

夕食を食べ終わった後、TBS『東大王』を見ていた。この番組の漢字オセロのコーナーが大好きで、テレビに向かって一人答えを発しつづけていた。

シイラ

「タチウオ」

すけとうだら

「ししゃもは、柳に葉に魚と書く」

海の生き物がテーマだった。海がある場所で育ってきた私の得意ジャンルだ。私の隣で、興味なさそうにスマートフォンを見ていた夫が呆れながら言葉を発した。

「…その知識、何かに活かせないの?」

難読漢字が得意だというのは、別に漢字の勉強をした訳ではなく、創作活動を続けたり、小説を読んだりしている中で自然に身につけた知識で、クイズ番組くらいでしか活かせないのが悔しい。

ただの専業主婦に『東大王』に出演する機会はないだろうけど、BS Japanextの『アタック25』だったら私でも出られるかもな。そう思いながら、わからなかった漢字をノートにメモしておいた。

「ママ、何、テレビに向かって、ひとりごと言っているの???」

『東大王』が終わった後、息子に英語を教えた。

息子は文章中に出てくる「Ken」という人物が女性か男性かわからず、「He」と「She」どちらが適切なのか悩んでいた。一般的に「Ken」といったら男性だよと、息子に教えた。しかし、それに対して「男性だ」と断言してしまうのは、色々複雑な現代社会では私も正直いうと自信がなかったりする。近年、三人称単数として使われている「They」にしてしまうのが意外と正解だったりするのかもしれない。中学校のテストで正解になるかどうかはわからないけれど。

「Ken」が女性か男性かわからないという、私や夫では想像できない悩みは、むしろ「良いところに気がついたね」と言ってあげるようなことだったのかもと、自分の常識を疑っている。