40歳の寄り道

某月某日。

どんな映画でも楽しめる

「どんな映画でも楽しめるのは君の才能だね」

と、学生時代の男友達に言われたことがある。『ゾディアック』を見た帰り道だった。

「こんなスッキリしない映画を見せてゴメン」

と、男友達が私に謝り

「そんなことないよ!」

と答えた。アメリカで起きた未解決事件を題材にした映画なのだが、詳しい内容は覚えていない。ただ、映画を見た後で入った鉄板焼き屋でお互いに感想を言い、とても盛り上がった。そのあとで冒頭のセリフを言われたのだった。

その男友達とはアニメ映画やドキュメンタリー映画、アクション映画など色々見た。彼もまた私と同じで、どんなジャンルの映画でも楽しめる人だった。やましいことは一切なく映画を見て感想を言い合うだけの関係だった。たくさん映画を一緒に見たのにも関わらず、どこの大学だったのかも、彼の名前すらも覚えていない。本当に申し訳ないのだけど、それくらい自分の中では印象の薄い人だった。1983年生まれのオフ会で知り合ったということだけは覚えている。

最近は映画館に行くことは滅多になくなってしまったが、エアロバイクを購入し、それを漕ぎながらいろんなジャンルの映画をiPadで見ている。今日は『ドラゴンボール超スーパーヒーロー』を見ながら、エアロバイクを漕いだ。まだ1時間くらいしか見ていないのだけど、気がついたら、まるで自分がZ戦士になったかのように、限界突破してやるぞという気分でエアロバイクを漕いでいて、なんだかとても心地よかった。舞空術のシーンでは、涼しい風が窓から入ってきて自分も飛んでいるような気分になった。

汗だくになりながら、エアロバイクから降りたあと「どんな映画でも楽しめるのは君の才能だね」という名前を忘れてしまった男友達の一言を思い出した。なんとなく、自分でもそれがわかる気がする。このセリフだけは忘れないようにしよう。