40歳の寄り道

某月某日。

ウニを食べる

40歳になる前、夫と一緒に少しお高めな回転寿司屋さんに行った。その日、息子は修学旅行で不在で、夫婦二人の特別な1日だった。

あまちゃん』再放送に影響を受け、ウニを美味しく食べられるようになりたいと思っていた。『あまちゃん』の主人公、天野アキは、ウニをとても美味しそうに食べる。ウニ丼も美味しそうだ。

しかし、私はウニを美味しいと思ったことがない。食べられないわけではない。これまでも『あまちゃん』に憧れ、安めの回転寿司や、スーパーのパック寿司などで、何度かウニ軍艦を食べてきたが、苦くて、なんだか薬っぽいような味がして、あまり美味しいとは思えなかった。

ここの寿司屋のウニ軍艦は高い。正確な値段はよく覚えていないが一皿450円くらいだったかも。『あまちゃん』の再放送がやっていなかったら、注文しなかっただろう。これで美味しいと思えなかったら、もうウニを食べるのはやめよう。そんな気持ちで注文した。

ウニ軍艦が席に運ばれてきた。軍艦にこぼれそうなくらいの濃いオレンジ色のウニが乗っかっている。今まで見てきたウニとは違う見た目に、期待と不安を抱き、恐る恐る口に入れる。

!?!?!?!?!?

じぇじぇじぇ!!!

私の頭の中で、『あまちゃん』のオープニングテーマが流れた。

美味しい!今まで食べてきたウニとは全然違う。甘くてクリーミー。口の中でふわーっととろけるような…。美味しいウニってこういうことをいうのか!!!

食べながら思わずニヤニヤ笑ってしまった。そんな私の様子を、夫が変な顔で見ていた。

その後、いろいろなお寿司を頂いたが、その日はウニのことばかり考えていた。北三陸に行き美味しいウニを食べたいとか、駅弁フェアが近所でやっていたらウニ弁当を買おうとか。10年くらい前、北海道に行ったとき、寿司屋に行って看板メニューのウニを食べなかったことも、今になって後悔した。帰りの車の助手席で、ずっと「ウニ!ウニ!」と言っていた。それくらい衝撃的だったのだ。

40年間、今までいろんなものを食べてきたけれど、この歳になっても未知の食体験ができることが嬉しい。これからの人生も、もっともっといろいろな美味しいものに出会えますように。