40歳の寄り道

某月某日。

テーマパークのアトラクション

午後の犬の散歩当番は夫。仕事から帰ってきた夫がすぐに犬を散歩に連れ出せるよう、ペットボトルの水を入れ替え、犬に洋服を着せ、エチケット袋を用意しておく。そんなことを、夕食の支度と並行してやっている。

夫が帰ってきた。

尻尾を振り帰宅を歓迎する犬を撫でくりまわし、いざ散歩へ。まるで、たくさん並んだテーマパークのアトラクションで自分の番が回ってきた子どものように嬉しそう。私もテーマパークのキャストさんになったつもりで「いってらっしゃい」と言う。さあ大冒険の始まりだ。

冷蔵庫の中を見て、ニラと人参があるのに気付き、今日の夕食のメインはチヂミにしようと決める。ニラは犬が中毒を起こす食べ物だ。うっかり床に落とさないように、と注意しながらざくざく切る。

ホットケーキとか、お好み焼きとか、かに玉とかひっくり返す料理が苦手。今日もフライパンに広げたチヂミの生地を上手にひっくり返すことができない。もっと小さく作るべきだったか、水を多く入れすぎたか、ニラの量が多すぎたか。どうしても崩れてしまう。しかしなんとか形を整え、歪なチヂミが完成する。醤油、砂糖、酢、胡麻油と白ゴマでチヂミのタレも作る。

やがて夫と犬が散歩から帰宅。車のヘッドライトに怯えてあまり歩かなかったらしい。それでも犬は、誇らしげな顔をしている。 テーマパークのアトラクションで、スリルを味わったあと誇らしげな顔になる子どものようだ。

夕食。

形は歪だがチヂミが美味しい。しかし夫が、しかめ面をしているのに気がついてしまう。恐る恐る

「口に合わなかった?」

と尋ねると

「いや、美味しいんだけど口内炎が痛いんだよ」

と言った。