41歳、黄桃記念日

某月某日。

2024年6月30日の日記

「41歳おめでとう」

 と、夫が言った。日付が変わる瞬間を、世界で一番好きな人の腕の中で迎え、そのまま眠りについた。

 午前6時、起床。天気は曇り。

 6月30日、今日は私の41歳の誕生日。41年前の今日、静岡県某所の川から流れてきた大きな桃の中から私は生まれたと両親は言った。なんてSFチックな生まれ方なのだろう。

 そんなことは!!!どーでもよくて!!!

 今日は、これから14時35分発の新幹線に乗って東京に行かなければいけない。マッキーこと槇原敬之がゲスト出演する『久保みねヒャダこじらせライブ』を観覧しに行くのだ。新幹線のチケットはモバイルスイカに紐付けた。とても楽しみだけど、これで本当に新幹線に乗れるのか不安。そして久しぶりのゆりかもめ。ちゃんとフジテレビ湾岸スタジオに迷わず辿り着けるのか不安で仕方ない。

「これから海に行く小学生みたいなテンションだね」

 と、夫が笑った。

 朝食を食べ終わり、radikoのタイムフリー機能で、6月29日放送の『槇原敬之Sweet Inspiration』を聴きながら洗濯物を部屋干し。槇原敬之『Curtain Call』が流れてくる。41歳になって最初に聴く曲だ。

さあ!カーテンコール 君を悩ました全てが 優しい笑顔でお辞儀をしたあと
前より成長した君を 誇らしく見つめながら この役を引き受けてよかったと思うんだ
(『Curtain Call』槇原敬之)

 ああ、すごくポジティブで41歳のはじまりにふさわしい曲。そのあと、流れてきた竹内まりやの『不思議なピーチパイ』も昔から大好きな曲で、濡れたタオルを広げながら軽くステップを踏んでいた。誕生日、もう何もかもが特別なことに思えてくる。

 洗濯物を全て干し終え、アイロンをかけようと息子の制服のYシャツを広げたあたりで、聞き覚えのあるラジオネームが読み上げられた。

 このラジオネーム、私だ!!!すっかり忘れていたが、1ヶ月くらい前に送ったメッセージだ!!!

 まさか、自分の誕生日に、マッキーが自分の送ったメッセージを読み上げてくれるのを聴くなんて想像していなかった!びっくりしすぎて、右手に持ったアイロンで洋服を焦がしそうになった。「ひゃあ、なんて日なんだ」と顔から汗が噴き出た。このメッセージの送り主が今日、誕生日だなんて、そして今日、マッキーが出演する『久保みねヒャダこじらせライブ』を見にいこうとしているなんて、マッキーはそんなこと知っているはずがない。マッキーありがとう、中学生の頃からずっと大好きです。

 すぐにでも東京に向かいたい気持ちだけど、昼食を作らなければならない。冷蔵庫の中の野菜と睨めっこしながら何か簡単に作れそうな物を頭の中で想像する。そわそわして落ち着かなくて、頭の中で献立を想像できない。

「こういう日は、何も作らなくてもいいんじゃないの?コンビニとかで済ませちゃえばさ」

 と、夫が気遣ってくれるが、今日は何故か私の主婦としてのプライドがそれを許さない。頭の中から浮かれた気持ちを一旦取り除いて、もう一度献立を考える。よし、トマトときゅうりの冷製スパゲッティにしよう。さっとトマトときゅうりとハムを刻み、適当に味付けし、スパゲッティを時間通りに茹でる。茹で上がったらスパゲッティを冷水で洗い、味付けしたトマトときゅうりとハムを和えるだけ。簡単!家族三人でずるずるとおいしく、それを食べた。

 少し休んだあと、さあ出発。新幹線の駅まで夫の運転する車に乗せてもらい20分。

 「私のかわりにバースデーケーキ食べといてよ」

 と夫と子に伝え、車を降り、新幹線の改札へ。

 心配していたモバイルSuicaだったが、スマートフォンをかざすと、ゲートが開いた。おお、チケットレスでスムーズ。大袈裟かもしれないが、新しい自分の人生への入り口のゲートが開いたようだった。

 今日の日記は、ここまでで終わり。東京での出来事と、楽しすぎた『久保みねヒャダ』のことは、私の拙い文章だとグタグタになってしまいそうだし、うっかり色々喋ってしまいそうだし、自分の心の中にとどめておく。ただ、ずっと面白くて笑いっぱなしだったことは書いておこう。機会があれば昼公演や他のゲストの回も見てみたい。席が前の方だったり、フジテレビ湾岸スタジオを出る頃には雨が止んでいたり、今日の私は超ラッキーレディ。24時間祝福されているような1日だった。こんな日が明日も明後日も続けば良いと思う。小さなハッピーやラッキーをたくさん拾い集めて、毎日を楽しく過ごす41歳でありたい。

 帰宅後、カレンダーをめくり布団の中に入った。目を閉じると、東京の夜景が瞼の裏に浮かびあがり、まだ東京の電車に揺られているようで、なかなか眠りにつくことができなかった。

 

(この日記は、noteに掲載したものと同一です)

2024年6月30日の日記|さいとうきいろ