40歳の寄り道

某月某日。

早送り

息子が卒業アルバムを持って帰ってきた。

私が小学生の頃は、1学年の人数が少なくアルバムなんて作らなかったから、色鮮やかな綺麗な形で思い出を残せることが少し羨ましい。その代わり、小6の時の担任の先生が作ったVHSビデオテープが児童一人一人に配られた。行事や、授業の発表など何かあるたびに先生はビデオを回していた。一度も再生したことがなかったのだが、20歳の頃、小学校の同級生5人で我が家に集まることがあり、そのビデオを見てみようということになった。

一番、最初に映し出されたのは、体操服姿で「いちに、いちに…」と、グラウンドを走る児童たちの姿。当時の体操服というと、女子はブルマーである(確か私が中学2年になった頃、ハーフパンツが採用された)。

「やばいやばいやばい」

「見るんじゃなかった」

誰かがリモコンを取り、早送りのボタンを押した。20歳の私たちには、たとえ12歳の頃の映像であっても、自分の体型と向き合うのは恥ずかしすぎた。

「よくあんなの平気で履くことができたよね」

と、みんなで笑い合った。

ほかに、合唱コンクールや、修学旅行、歴史新聞の発表、登下校の様子などが撮影されていた。運動会や、遠泳大会などはやはり恥ずかしかったので早送りした。

そんな恥ずかしさがたくさん詰まったビデオテープも、気がついたら再生できる機器がなくなってしまった。わざわざデジタル化しようとも思わない。

明日は息子の卒業式。6年間でたくさん成長した息子を見て、涙もろい私は泣いてしまいそう。でも、笑顔で「おめでとう」と言えるようにしたい。