40歳の寄り道

某月某日。

この世界でわたしは小説家らしい

夢を見た。家事と、犬の世話ばかりの春休みに虚しさを感じ、夫も子も起きているのに顔を見るのが嫌になってしまい、気持ちをリセットしようと22時前に寝た夜に見た夢だった。

小さな会議室。窓から明るい光が入ってきて眩しい。

わたしの他に、俳人、お笑い芸人、落語家、ラジオDJ、エッセイストらがいる。ホワイトボードに、「俳句の会」と書いてある。これから句会が始まるらしい。

「あともう一人来ますから」

と、お笑い芸人が言う。

しばらく待っていると、俳句なんて書きそうもないシンガーソングライターの男が現れた。彼はわたしの隣の席に座った。

「はじめまして」

と、わたしは挨拶をした。

「あなたの小説、読ませていただきました」

と、彼は私に言った。どうやらこの世界で、わたしは小説家らしい。わたしの書いた小説は、映画化されていてその主題歌を彼が歌っているということを聞くが、なぜかわたしは特に驚かず、自分が小説家だということをすんなりと受け止めている。

短冊が配られ、それに句をさらっと書いて提出する。句稿が配られ選句しようとするが、文字がみみずのようで全く読めない。

なぜか、自分が小説家である、という夢をよく見る。また、「あなたは文章を書く仕事をしなさい」と夢の中で誰かに言われたこともある。大学生くらいのころは、ときどき短い小説を書いていて、賞に応募していたこともあったし、小さなコンテストで、運良く次席をとったこともあった。でも、もっとやらなきゃいけないことがある気がして、なぜだか書くのをやめてしまった。結局、大学も中退してしまったし、仕事も、趣味でやってたダンスも、人間関係も、不器用なわたしにはうまくいかないことばかりで、なにもかも中途半端で終わってしまったのだけど。わたしの見る夢は、書くことへの未練なのかもしれない。アイデアなら手帳にたくさん書いてあったりする。それをまた形にしてみようか。

そういえば、6年くらい句会に顔を出していないな。句会は東京で行うことが多く、新幹線に乗って行くのが面倒くさくなってしまった。東京まで行く交通費ももっと別のことに使いたい。昔みたいに、ギラギラした気持ちはどこに行ったのだろう。