40歳の寄り道

某月某日。

ドッペルゲンガー

うちの犬は、一昨年12月に後ろ足を脱臼してから、関節の健康を維持するサプリメントを飲み続けている。生魚のにおいのする液体が入っているサプリだ。犬はどうもそれが苦手なようで、毎回、飲ませるのに一苦労。道端に落ちてる枯葉とか、排泄物とか平気で拾い食いしようとするくせに、サプリはダメなのなんなんだ。

今日は、食パンを小さく千切り、見えないように綺麗にサプリを包んで食べさせてみた。犬は喜んで口に入れたが、すぐに

「オエッ、カーッ」

と、サプリだけ上手に口から出した。作戦失敗である。犬はパンをもっと欲しがったが、あげなかった。

午後、農産物直売所へ行く。野菜をたくさん買い、焼き芋屋さんが来ていたので焼き芋を一本買った。

帰り道、歩いていると後ろから来た車にクラクションを小さく鳴らされた。振り向くと、運転手の男性、多分60代くらいの方がこちらに向かって笑顔で手を振っていた。

…えっと、誰ですか???

私に手を振りながら去っていく車を、私はぽかんと眺めていた。ご近所さんでもなさそうだし、PTA関係でもなさそう。誰かに間違えられたのかもしれない。

以前も、知らない人に「今日は病院じゃないんですか?」と声をかけられ、戸惑っていると「あ、すみません人違いでした」と、謝られたことがある。どうやら、私に似ている人がこの近所に住んでいるらしい。ドッペルゲンガーだったりして。自分が見たら死ぬやつ。私の知らないところで、私の知らない人と交流しながら、私のドッペルゲンガーが、楽しく暮らしているのかも。

帰宅後、買ってきた焼き芋を犬と一緒に食べた。焼き芋の中にサプリを入れて食べさせると喜んで食べてくれた。今度は成功した。

今日の犬の散歩は、ドッペルゲンガーに会うのではないかと少し怖かった。