41歳、黄桃記念日

某月某日。

あと50ページ

8月29日。夏休み最終日。聴いていたラジオから大江千里さんの『夏の決心』が流れた。「夏休みはーやっぱりー短いー」というサビの部分が頭の中で延々ループしている。

中一息子は朝早くから、まだ終わっていない夏休みの宿題を終わらせようと必死だ。昼食後、息子はゲームをやってまったり過ごしていた。まあ、大丈夫だろうと勝手に思っていた。勉強や子どもの将来についてはなるべく口出ししないというのが、私のルールだ。

17時、夫帰宅。夫は、息子の宿題に関して、やたらと焦っている。

「まだ終わってないっていっても、あともうちょっとで終わるんでしょ?」

と、私。

「いや、あと50ページ残っているんだよ…」

「はあ???」

50ページっていうと、村上春樹の『ドライブ・マイ・カー』がそれくらいのページ数だった気がする。1〜2時間あれば読み終わる作品だけど、50ページ分の宿題は、もっと時間がかかりそう。それ以外の宿題もまだ手をつけていないし、赤ペンで丸つけもしないといけないし。って、いやいや、お盆で帰省する前に、あとどれだけ残っているか尋ねたら「もうちょっとで終わる」って言ってたじゃん。まあ、実際見て確認しなかった私も悪いんだけどさ。こんなに宿題が残っているってどーゆーことだ。夏休み、何をやって過ごしてたんだ…。

「昼間、ゲームなんてやらせちゃダメだよ!」

と怒られる私。私が悪いのか?やっていなかった息子がいけないんじゃないのか、と複雑な気持ちになる。

仕方ないので、家族三人で協力して息子の宿題を終わらせることにした。17時に開始し、夕食を挟んで日付が変わるまでやっていた。いつも23時頃に布団に入る私と夫は、眠すぎて、このイレギュラーな状況にテンションがおかしくなっていた。それでもなんとか頑張った。深夜0時。まだ終わっていなかったが、流石にもう寝させる。夫も仕事だし、息子も自転車通学中に事故とかしたらいけないし。

布団の中でSNSを見ると「学校に行きたくない人へ」というメッセージがちらほらと目に入る。夏休みが終わるこの時期恒例になってきたこのメッセージが、私は少しだけ苦手だったりする。私も学校なんか行きたくなかったな。でも、どんなに嫌でも辛くても、あの頃の私の見ていた世界は狭すぎて、学校だけが全てだった。「行きたくなくても、行かなくちゃいけないんだ!あなたに何がわかるんだ!」と中学時代の自分が反発している。あの頃、インターネットに触れていたら、もっと自分の人生は変わっていたかもしれない。

でも、子どもがもしも「学校に行きたくない」って言ったら、私は受け入れてあげたい。私が、自分の親にやってもらいたかったこと。次世代型路面電車に乗って一緒に映画でも見にいこうか。