最近、エッセイが書けない。こんなことされて嫌だった、つらかった…そんな思いが強すぎて、読者を不快にさせてしまうのではないかと思うと、なんだか申し訳なくてどうしても筆が進まない。以前、ネット上に生い立ちの記を書いていたが、読み返すと自己保身のような文章で嫌になって全部消してしまった。日記のような淡々としたもののほうが自分には向いているのかもしれない。
6月30日、5時25分に「誕生日おめでとう」と夫に起こされた。42歳になった。42年前の6月30日、桃から生まれたらしい。その桃は川から流れてきたとか、海を漂流していたとか、橋の下に落ちていたとか、聞いてもはっきりしない。ちなみに一つ下の弟は、金庫の中から生まれたらしい。
誕生日をどう過ごそうかと考え、バスに乗り映画館に行くことにした。映画を見ている間は、情報がシャットアウトされる。電話もかかってこない。すごく好きな場所。どの映画が良いかなとスマートフォンで検索して『F1/エフワン』を選ぶ。3ヶ月ぶりの映画館だ。
紺色のTシャツに、ピンク色のズボン、紺色の帽子を被る。外はじりじりと暑い。バス待ちの列を見ると、老若男女問わず日傘を指している人が多い。私も日傘を持ってこればよかった。バスの中、イヤホンで音楽を聴く。誕生日に一番最初に聴いた曲を、その年のテーマソングにしている。昨年は槇原敬之『Curtain Call』だった。ラジオから流れてきた。42歳のテーマソングもマッキーが良いなと、マッキーをランダム再生する。一番最初に流れてきた曲は『In love again?』。この曲はすごく簡単に言うと40代の片思いソング。アルバム『不安の中に手を突っ込んで』に収録されている、とても好きな歌。うん、でもね私がこの年になって恋なんて面倒なことをすることはもうないでしょう。理屈っぽい夫と、お互いに歩み寄ってここまでくるのどれだけ大変だったか。楽しいこともたくさんあったけどね。
映画館のあるショッピングモールへ。昼食に銀だこを食べたあと映画を見る。『F1/エフワン』始まった瞬間、「あ、やばいこれ酔うやつだ」なんて思ったけれどすぐ慣れた。とても爽快だった。あっという間の2時間35分。61歳のブラッドピッドとドライブしたい。
特に寄り道したりせず帰宅。やがて息子も学校から帰ってきた。カバンから出した1枚の封筒。何、誕生日プレゼント?いや違う、PTA広報紙の初稿とUSBだ!おおお、この写真、本当に私が取ったのか!?この文章、本当に私が書いたのか!?とても綺麗で感動した。しばらく見入ってしまう。編集担当の人にお礼のメールをし、校正担当の人にもメールを送る。でもまだ初稿。校正を終えて、完成するまでまだ気が抜けない広報部長。
radikoのタイムフリーでマッキーのラジオ『槇原敬之のSweet Inspiration』を聴きながら夕食作り。私は、自分でもよくわからないすごく小さな直感が働くことがある。例えば、小中学生の頃なんかは食べたいなと思ったものが給食で出てきたりとか、ドラマや小説の次の展開が当たったりとか、頭の中で思い浮かべた曲や、さっき聴いた曲がラジオから流れてくるとか。バスの中で聴いたばかりの『In love again?』がラジオから流れてきたのだ。リアタイ視聴できない私は、ネタバレを避けたくて、ラジオ関係のハッシュタグはミュートしているので本当に知らなかった。そしてもう一つ思い出したことがあった。この曲が収録されている『不安の中に手を突っ込んで』は15年前の6月30日発売だった。確かその頃は、結婚式の準備で忙しかった頃だ。これを歌っていた頃のマッキーも40代になったばかりだったか…などと思う。これからも、小さな直感を大切にしていきたいと思った。
夫は残業。「ごめんなさい、今日はケーキは買って帰れません」とLINEが来た。「いいよ、気にするな」と返信する。息子と二人で『Qさま』を見ながらタコライスを食べた。
*42歳の叶えたい夢*
・豪華客船に乗ってのんびりする
・女による女のためのR-18文学賞の最終選考に残れるような作品を書く
・日記を本にする
・ダイエットに成功
・コンパクトサイズのエレクトーンを購入する