40歳の寄り道

某月某日。

7/28 空を眺める蝉

久しぶりに袖を通したエメラルドグリーンのTシャツは、昨年の柔軟剤の香りがした。今まで着なかった理由があるわけでもなく、ただ何となく手に取らなかっただけ。ずっと忘れていた着心地の良さを思い出して嬉しい。今年の夏は、このTシャツをあと何回着ることができるだろうか。

夏休み三日目、今日も昼食に悩む。冷蔵庫の中にはひき肉と、卵、中途半端に余った野菜がいくつか…これらで作れるものはなんだろうか。キーマカレーはこの前、作ったもんなあ。うーむ…と考え、思いついたのはロコモコだった。野菜を刻み挽肉と混ぜ、ハンバーグのタネを作り、それをフライパンで焼く。それをごはんに乗せてデミグラスソースをかけ、目玉焼きと千切りキャベツを添えれば、ロコモコの完成。ああ今日も無事に昼ごはんを作ることができてよかった。

午後、冷蔵庫の中が寂しいので買い物に行く。夏休み中のお昼ご飯に使えそうな食材をたくさん買う。お菓子や、ビールのおつまみも買う。レジに並んでいると、前に並んでいた女性が

「レジ袋お願いします!ゴミ袋に使いますので!」

と、少しびっくりするくらい大きな声で、店員さんにお願いしていた。レジ袋を受け取ると、

「ありがとうございます!」

と、また気持ちいいくらい大きな声で言った。店員さんもつられて大きな声で「ありがとうございました」と言った。私の番になると、再び店員さんの声が、いつものボリュームに戻った。

買い物から帰宅すると、庭に一匹の蝉が仰向けになって空を眺めていた。行く時には、いなかった蝉だ。まだ生きているかもしれないなと、いきなり動き出すのを覚悟しながら、蝉に近づく。すると、ジリジリジリッと激しく暴れ、最後の力を振り絞って、どこかに飛んでいった。うん、やっぱりいきなり動くのは、覚悟していてもビックリする。きっともうすぐ逝くのだろうな。どうか人気のない静かな場所で、安らかに眠れますように…と飛ぶ蝉を見ていた。